なぜ本研究所を設立したのか

 哲学心理研究所は、病院で常勤の公認心理師/臨床心理士として勤務している私が、職場の了承も得て個人で開業したものです。ではなぜこのような研究所を設立したのでしょうか。その理由は3つあります。

幅広いニーズに応えるため

 まず、一つ目の理由は、企業のメンタルヘルス研修や認知行動療法の専門家研修に対する幅広いニーズに応えるためです。勤務している病院の業務として、そのような研修を行っていましたが、個人的に依頼されることもありました。病院の業務として行う場合は、病院が許可した条件に見合うところだけになります。たとえば、遠いところにある企業への研修などは、病院の業務として行くのはなかなか難しいということになります。また、相手方は講師として私を希望していても、病院が引き受けた仕事ですから、誰を講師として出すかは病院が決めることとなります(私の勤務する病院には心理師が10名以上います)。このように、病院の業務として行なうことには限界があるため、思い切って開業して、研修の依頼を個人的に引き受けることにしたのです。

自由な内容にできるため

 二つ目の理由としては、研修の中身を自由に自分で決められるため、ということがあります。病院として引き受けた仕事であれば、当然に、病院の責任において研修を行うこととなるため、内容についても直属の上司(副院長)の許可が必要となります。私は個人的に哲学の研究を20年以上続けており、そこで得た知見を研修に反映させたいと考えているのですが、そういった、いわば非常識な内容の研修を病院の業務として行うことには抵抗がありますし、許可されない可能性も出てくるのです。そこで、個人的な研究所を開設して、そこでの仕事として研修を引き受ければ、すべて、自分の責任で内容を決めることができると考えたのです。これが哲学心理研究所を開設した2つ目の理由です。

仕事量をコントロールできるため

 三つ目の理由は、 個人開業して行う仕事は自分の裁量で決められるので、仕事量をコントロールすることが可能だ、という点も挙げられます。私は基本的に研修の講師として、自分の臨床経験に基づいた知識や自分の学んだ知見を分かりやすく参加者に伝える、ということにやりがいを感じています。したがって、なるべく多くの研修を行いたいと考えています。ところが、病院での業務となると、研修ばかり行っているわけにはいきません。私は病院の管理職なので、ある程度裁量権があり、仕事を振ることはできるのですが、自分にばかり研修の業務を振ることはできません。やるべき業務は他にもたくさんあります。そこで、個人的に研究所を開設して、自分のやりたいことをやりたいだけできる環境をつくることにしたのです。これなら個人的に営業して仕事を増やすこともできますし、多すぎると思ったら断ることも、自分の権限で可能なのです。

 以上のように、研修への幅広いニーズに応えるため、研修内容を自由に決められるため、そして、仕事量を自分でコントロールできるために、個人開業して、哲学心理研究所を設立したのです。

京都大学でドイツ観念論哲学とその日本への影響を学ぶ。社会人経験後、認知行動療法の第一人者である井上和臣先生の指導を仰ぐために、鳴門教育大学大学院に進学。この頃からマインドフルネスの実践と研究を始める。 大学院修了後、長岡病院に入職。大阪経済大学・花園大学・立命館大学の非常勤講師、EAP研究所の客員研究員などを兼務。少年院へのマインドフルネス導入の助言も行っている。認知行動療法やマインドフルネスの研修をこれまで100回以上担当。 2020年1月に哲学心理研究所を開業。

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